1.移動平均線の傾き

移動平均線はテクニカル指標の中で最も基本的な分析手法といえます。
現時点からA日間の価格の平均値を算出して、日々の推移を見るのが移動平均線です。

A日をA週やA月としてもよいですし、デイトレードで5分足を見る場合にはA本分(5分×A)の分析を行うこともあります。

またこのAにはさまざまな数字が入りますが、それぞれの特徴や意味についてはあらためて記述します。

ここではまず、5日移動平均線と、26日移動平均線を描画してみます。
チャートはドル円の日足チャートです。
ローソク足は、透けているのが陽線、白塗りのものが陰線です。
そして、黄色い線が5日移動平均線、青い線が26日移動平均線です。

黄色い5日移動平均線は、遡ること5日分の価格の平均値をつないだもので、青い26日移動平均線は、遡ること26日分です。
ここでいう価格とは、ローソク1本1本の終値をいいます。

5日線(黄)は相場の動きに沿うように細かく上下していますが、一方、26日線(青)は相場の中心を縫うように推移しています。
参照する期間が短いほど細かな波動を描きますし、参照期間が長ければ長いほど緩やかな線を描きます。

それでは、移動平均線の見方です。
赤い円で印をつけたところが重要ポイントになります。


簡単にいうと、傾きが変わったところが買い、もしくは売りのサインです。
ただし、5日線(黄)などの短い期間での移動平均線は市場の動きにあまりに敏感に反応するので、揉み合い相場になってしまうと頻繁にサインを出すという欠点があります。一方、26日線(青)は 緩やかに推移しますので、相場のより大きなトレンドを捉えるのに適しています。

たとえば、新たに売買を開始するときは26日線を、保有しているポジションを閉じるときには5日線を利用するなどの工夫が必要です。

移動平均線の傾きというのはとても単純な売買シグナルではありますが、相場に携われば携わるほど、実に重要な指標であることに気付きます。

次回は冒頭で説明したAに入る数字、すなわち参照期間の特徴や選び方、使い方についてお伝えします。

2.移動平均線の参照期間

移動平均線といっても、分足、時間足、日足、週足、月足、それぞれで一体どれくらいの参照期間で設定・分析するのがよいのか、テクニカル分析に馴染みのない方からは、それに関する質問が多く寄せられます。

結論から述べますと、区切りのいい数字を用います。

1年は52週間です。その1/2である半年は26週間です。
さらにその半分は13週間で、1ヵ月は5週間です。
以前は土曜日も取引が行われていましたが、現在は相場が動く平日は週に5日です。
1週間は5日で、1ヵ月は22日、3ヵ月は66日です。
また、グランビルがアメリカの相場を研究していた当時、200日線が相場の波とうまい具合に合致していたことから、今も、200日(8ヵ月)が長期線としてよく使われます。
また、1日は24時間で、1/2は12時間、1/3なら8時間です。
分足ならば同様に、60分、30分、10分、5分といった数値を使います。
このように、意味合いは、週を日数を基本にしたり、一日の時間を基本にしていますが、いずれか基本となる数値の倍数を使うことが多い物です。
ぱっとしない説明に思えますが、ほぼイメージはつかめたのではないかと思います。

【本来、確実な数値はなく】、そこに数学的な意味を持たせることはできません。
これが、気象観測であるなら、1年に4回の季節が確認されますので、365日、7日、その倍数は意味を持ちます。
が、相場にはその絶対的なサイクルはありません。

特に多くの投資家が、つまりは多くのシステムが採用している数値が、重要な意味を持つと考えるべきでしょう。
日足でいう25日、75日、200日、週足でいう13週、26週などは特によく使われます。


※いくつものフィボナッチ数を使った移動平均線を同時に描画 (チャート提供:GCハロー)



数字に関してはもうひとつ書き添えておきたいことがあります。
テクニカル分析というものは、世に溢れる情報、企業業績やGDP、さまざまなファンダメンタルズ、 政治、軍事、あらゆるニュースと投資家の思惑を踏まえて形成される価格の値動きを分析します。 当たらない相場予測に基づいた取引さえも値動きに内包され、テクニカルに分析されます。
経済は人間の営みであるとはいえ、広い意味ではそれもまた自然現象です。
自然現象である以上、見える見えないに関わらず、不思議なルールに縛られることも多いものです。

数字で言えば、フィボナッチ数です。
イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチにちなんで名付けられたもので、どの項もその前の2つの項の和となる数列のことです。

0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, …

これらは隣あう数字の比率が限りなく1:1.618に近づいていく数列であり、つまりは黄金比(黄金分割)となっているのです。

ひまわりの種の数であるとか、葉っぱのつき方であるとか、ミツバチの家系であるとか、音階の数であるとか、銀河の渦であるとか、自然界のさまざまものに不思議と絡んでくる数字です。
いかにもオカルトな、神秘的な話ではありますが、否定しようにも黄金分割は自然界のいたるところに存在しますし、 われわれが住む世界は、その数値を利用した人工物に意外と溢れかえっているものです。

0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, …

1週間を示す5日、3ヵ月を示す13週、はそれ自体にわかりやすい意味がありますが、 そうした理由から、それ以外のフィボナッチ数をテクニカル分析で利用することも多く、 その数値にこだわった分析手法も存在します。

ゴールデンクロスとデッドクロス

移動平均線を用いた分析手法の中でも特に有名なものに、長短2つの移動平均線を用いた ゴールデンクロスとデッドクロスによる投資判断があります。
下のチャートは信越化学工業(4063)の推移に、2本の移動平均線を描画したものです。


・ローソク足 週足
・赤色 13週移動平均線
・青色 26週移動平均線


信越化学工業(4063) 週足

直近の株価の動きにより敏感に反応する13週線(赤)と、それよりも緩やかにカーブを描く26週線がクロスするポイントを売買のシグナルとして利用します。
最初の赤枠がゴールデンクロス、次の赤枠がデッドクロスです。
デッドクロスは、短期線(赤)が長期線(青)を上から下へ突き抜ける形となり、ゴールデンクロスはその逆です。

デッドクロスで売って、ゴールデンクロスで買って、またデッドクロスで売って・・・と 繰り返すことにより、利益を上げられるかどうかは、相場の波動の大きさによります。

ソフトバンクグループ(9984)週足



始めの▼はデッドクロスで売って売っています。
次の▲はゴールデンクロスで買っています。

いずれもそれぞれのクロスが出現した引値で売買することになります。

買いも売りもそれぞれ1本ずつありますが、損益に大きな違いが出ています。
それはつまり、短いトレンドでは利益を出せず、長いトレンドになるほど移動平均線のクロスが 有効なシグナルを発することを示しています。

上のチャートは、大きなトレンドが上下で繰り返して出現していたもので、すべてのシグナルに 従ったとしても差し引きでプラスのリターンとなったかもしれませんが、万一揉み合い相場が 長く続いてしまうと、残念ながら細かなロスを積み重ねてしまうことになります。

実践編-26週線による判断

ご覧いただいているのは、ユーロ円相場の週足です。
2020年5月より上昇相場を演じていますが、26週移動平均線を上回ったのはQ2(4月~6月)に入ったあたりからです。そこからは移動平均線も上向き、さらにその移動平均線よりも上に値が位置しているので、安心して上昇トレンドに乗ることができます。


ただし、どこから買っても構わないかというと、そうではなくて、 26週線の近くで買う、つまり「安く買う」ことが大切になります。
たとえば先週、移動平均線にタッチしたあたりが、買いのチャンスであったといえるでしょう。
ここからは、移動平均線を割れたらポジションをいったん閉じるなど、警戒を怠らないようにすることも重要です。

実践編-本当に移動平均線で判断する

下のグラフは何を表しているかわかりますか?
この線はこのあと上昇するでしょうか、下降するでしょうか、横ばいで推移するでしょうか。
判断できますか?確信は持てますか?


正解は、ドル円の26日移動平均線です。
移動平均線を見るときは、ローソク足との組み合わせで眺めることが多いものですが、 こうして単独で見てみると、余計な雑念もなく、上昇か下落か、それとも判断しにくい、確信できない場面なのかを、 ストレートに感じることができます。

ローソク足を乗せたものが、下にあるチャートです。相場の入り口がわからなくなったときは、シンプルに移動平均線を眺めて参考にしてみるというのも、1つの手です。


実践編-判断を延長する

下はユーロ円の週足チャートです。
ローソク足に、26週移動平均線を描画しただけのシンプルなチャートです。
先週は移動平均線を割りこんできていましたが、今週は、いまのところ持ち直しています。
ちょうど分岐点に当たる上に、移動平均線の向きもちょうど横ばいになろうかという雰囲気にあっては、 なかなか上下どちらに放れるかの判断がつきません。


今週の足が移動平均線よりも上に位置した場合は揉み合いの最中ですので判断を延期します。
もしも移動平均線を下回って終わるようであれば、反落の可能性が高まると考えます。

実践編-24時間移動平均線とのクロス

ドル円の1時間ラインチャートに、24時間移動平均線を重ねています。
相場と移動平均線のゴールデンクロス、デッドクロスで売買した場合の成果を確認してみます。
オレンジ色の〇がゴールデンクロスで買い、青い〇がデッドクロスで売り、とします。
取れる値幅の大小はありますが、このチャート内ではすべてプラス収益でトレードできていることになります。
シンプルな指標ながら、移動平均線の実践力を再認識させられます。


実践編-明確な判断基準

金(GOLD)チャートです。ボリンジャーバンド(2σ)で見ても上昇基調にどこか疲弊感が 伝わってきますが、フィボナッチ・リトレースメントをあててみると、 半値戻しを達成して、そこではね返されようとしていることがわかります。
ここで移動平均線を明確に割り込んでくるか、あるいはもう一度高値を試しにくるか、 動意づくまであと少しのところまできているように思います。

しかし結局、相場からの曖昧なメッセージを決するのは、移動平均線の傾きです。


実践編-シンプルに判断する

下のチャートはドル円の日足ですが、描画しているのは21日移動平均線のみです。
日々のローソク足を消すとトレンドだけが浮き上がって、余計な情報に惑わされることなく、 相場は今、上向きなのか下向きなのか、それとも迷っているのかが、手に取るように分かります。


一直線に、真っ逆さまに落ちています。反転の兆しはまだ見えませんが、前回安値(移動平均線での安値)がそろそろ近づいてきました。
テクニカル分析でもっとも大切と考えられるこの指標を、しっかりと意識するためにも、こうした作業が時に重要です。


実践編-押し目待ち

ドル円の日足チャートです。移動平均線が下向きから横ばいへと移り変わっているところです。
直近の値動きが移動平均線を上向かせつつあるわけですが、このまま+1σラインを突破して上昇するようであれば、移動平均線も上向いてくることになります。
仕掛けどころとしては、移動平均線が上向いて、かつ値が移動平均線近辺にあるところですから、 このまま相場が上昇した後に押し目を迎えた場合に、格好の仕掛けどころがやってくる、とのシナリオが描けます。


ちなみにドル円の時間足を見てみると、こちらは移動平均線が上向きから横ばいに変わろうかというシーンです。
しかし、まだ微かに上向きの移動平均線が確認できる上に、移動平均線割れを起こしていません。
先ほどの日足チャートと組み合わせて考えると、+2σを目指す相場が、もっとも素直に予想した展開ということになりそうです。


実践編-ゴールデンクロス後の押し目

下のチャートは、ドル円の日足に2本の移動平均線を描いています。
ご覧の通り、黄色のラインの移動平均線は短期間、水色のラインは中期間のものになります。
中期のラインはまだ下向いているものの値が上抜けて短期線とのゴールデンクロスも果たしています。
さらには値がいったん落ち込んで、移動平均線までの下落ののちに、ふたたび反転していることから、 このまま上昇トレンドを築いて行くかもしれないとの期待が高まります。


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移動平均線と、そのクロスによる分析は非常にポピュラーなものですが、 これを本気で投資判断ツールとして活用されている方は、どれくらいいらっしゃるでしょう。
移動平均線による分析の難しさは、パラメータの設定と、利食いや逃げ場のポイントにあります。
しかも、どの時代でもどの市場でも通じる、夢のパラメータなど存在しないのが実情です。
シンプルでわかりやすく、教科書の最初に出てくる分析手法でさえも、巧みに使いこなすためには、 相当な相場経験と観察力が要求されます。

「20年間現役ファンドマネジャー」のブログにもあるように、移動平均線や MACD、RSI、ボリンジャーバンドなど、王道ともいえるテクニカル分析手法は、 わかりやすくて簡単そうに見えることが、罪なのかもしれません。

実践編-下髭のみ移動平均線を超える動き

ドル円の時間足です。ボリンジャーバンドはそれほど広い幅にはなっておらず、緩やかな上昇を描いています。
ちょうど移動平均線のあたりに値がありますが、一応サポートラインとして機能している様が、前回の押し目でも見て取れます。
一瞬の-1σまでの下落はあっても、下髭で終わるパターンというのは、意外と多く存在します。


実践編-予想を1つに絞る

ユーロ円の日足チャートです。
124円からの+2σ離れとその後の下落は、-1σ割れを起こしたところで反発して押し目、あるいは戻りを形づくっています。
押し目が感性するか、戻りに過ぎなかったと確信できるか、それぞれ直近の高値安値を超えることが条件となってしまうため、 判断がだいぶ先送りされてしまいます。現時点である程度の判断をするには、やはりは移動平均線の傾きが役に立ちます。


ここにきてわずかに傾いてきた移動平均線が、相場の行く先を暗示しています。

実践編-移動平均線での攻防

ドル円の時間足チャートです。ボリンジャーバンドの-2σ突破から反発して移動平均線まで辿りついています。
上下に髭が伸びた足が連続しており、相場参加者の迷いや、力の拮抗が伝わってきます。
このあと再び下降するのか、移動平均線を抜けるのかは、何か新しい理由が必要なのかもしれません。
急激な動きが出てくるかどうかは、 移動平均線という重要なテクニカルポイント近辺での反応次第です。
その移動平均線は下を向いているので、跳ね返されて転落というシナリオのほうが、わずかに確率が高いように思います。


実践編-レジスタンスラインとしての移動平均線

ドル円の日足チャートです。ボリンジャーバンドを描画しており、中心にある線は移動平均線になります。
-2σを超える下落から反転して、移動平均線近辺まで到達しました。
今日のローソク足はその移動平均線に跳ね返されるような形となっています。
移動平均線がレジスタンスラインとして機能しているかのように見えますが、今日の相場が終わるまではハッキリとしません。
この時点で反落を予想して相場に入り込むのは早合点となるかもしれません。慎重な判断、 つまりはローソク足の確定を待たなくては、確信をもって判断することができません。


いったんの調整をみたあとで、移動平均線越えにトライしてくるだろうことは、 介入が続いている地合いを考えるに、十分あり得ることと考えます。
焦らず、様子をみる余裕がほしいところです。セオリーとしては、反転上昇のための押し目待ち、ではないかと考えます。

実践編-押し目のめど

ドル円の日足ボリンジャーバンドです。
+1σを超えるところまで急上昇したドルは、ここにきて一服。 いったん下落して押し目を作ったほうが、強い上昇相場になる可能性があります。
一本調子の相場は脆く崩れやすいものです。


ここからはもみ合いながらも+2σラインに乗せていくか、 いったん下落して押し目を作るかの2通りが考えられますが、 下げたとしても移動平均線まで、つまりは107.78円割れのレベルでとどまらないと、 上昇トレンド発生に疑問符がでてしまいます。
移動平均線近辺までの押し目を作った後に再び+1σライン超えをみせて、 ボリンジャーバンドの向きが上向いてくれば、しばらくの上昇が約束されます。
もう数日、ちょうどこの1週間ほどが、大切な見極め時期となりそうです。

実践編-移動平均線での押し目

任天堂(7974)の日足チャートです。
-2σを大きく割り込んだ下落から急反転して、+1σ突破ののち、 移動平均線あたりまで反落して押し目を形成しようかという状態にあります。
赤いラインを引いた55,970円近辺が移動平均線であり、急落前の水準でもあることから、 このポイントが重要な意味をもつことになりそうです。


55,970円で値が止まって再び反発し、今度は緩やかに上昇していくようであれば、 長く強い上昇トレンドが築けるかもしれません。
しかしこの急上昇を支えたものが、需給の反応や単月での安心感であったならば、 相場の持続性にはやや疑問符がついて回ります。
その意味でも、ここに押し目が現れることが、とても重要な鍵となりそうです。

実践編-移動平均線での攻防

ドル円の日足チャートです。
反発後の押し目なのか、移動平均線でとどまっていますが、 ここでしばらく値を保つようであれば、相場上昇のエネルギーが溜まり始めます。
急落直後の急反発で移動平均線上にいるということは、黙っていては移動平均線は上向きません。 過去26日間なら26日間の平均ですから、現在値よりも高かった記憶が消えていきながら、 現在値と変わらぬ位置でもみ合っていては、移動平均線が下向くだけです。
ただし、移動平均線が下に移動して、値がそのままということは、それは、 少なくとも移動平均線を上抜くことになりますので、微かな上昇圧力だけで、 相場のトレンド(移動平均線の向き)に負けることなく、上昇への予兆を示すことが可能になります。
それが果たせるかどうか、しばらく見守り続ける必要があります。



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